大学院からでも東大に行くべき?高学歴は得?他大から東大院を受験するメリット・デメリット

大学・大学院

みなさん、学歴は高ければ高いほど良いと思っていませんか?就職、年収、結婚…、人生のいろいろな面で得になると思っていませんか?…ええ、筆者もそう思っていました。実際に、東大の大学院を卒業するまでは。

今のご時世、「高学歴ワーキングプア」という言葉も浸透しており、学歴と年収は必ずしも比例しないことが一般に知られています。高学歴でも就職活動に苦戦している人、ギリギリの生活をしている人がテレビで特集されることもありますね。

「…でも、それは、大学で遊んでしまった一部の人でしょう?」という声が聞こえてきそうです。そして、今も、偏差値上位の大学を目指して日々必死に勉強している受験生が大勢おり、また、「子供の将来の幸せのため」と言って頑張らせている親も大勢いることでしょう。

今回は、充実した人生を信じて受験勉強を頑張って、大学院まで卒業したものの、社会人として人生に失敗した筆者の目線で、東大院卒の学歴を持つメリット・デメリットをお話しします。

筆者の経歴

筆者は、都心に近い田舎の進学高校(現役・浪人合わせて、東大合格者が年に1~2人出るレベル)を卒業し、一年浪人して地方の中堅国立大学に進学しました。

大学の農学部を四年で卒業した後、東京大学大学院農学生命科学研究科に入学し、修士2年、博士3年を過ごしました。博士号取得の後、同大学院で博士研究員として勤務し、外資系メーカーに就職しました。企業では仕事についていけず2年でクビになり、今は農場で牛の世話をしています。

東大の大学院を目指したきっかけ

筆者は現役受験生時代に東大を目指しましたが、学力が及ばず、地方の国立大学に進学しました。当時の自分にとって、大学院の受験は、東大再チャレンジの意味合いが強かったです。また、当時は研究者を目指していたので、最終学歴が東大の方が有利だと思いました。

学生時代というのは、お勉強ができるほど「エラい」と評価されますね。学校の先生も両親も祖父母もこぞって子供に勉強を頑張らせます。今思えば、家族して「何も知らなかったから東大を目指した」と言えます。

私も、「勉強ができること」「テストでの成績が良いこと」「良い大学を卒業するすること」が、「良い人生」につながるものだと漠然と信じていました。また、良い大学を出て大企業に就職しないと惨めな人生を送ることになると、(親共々)漠然と信じていました。

このような動機で東大入試に挑む人は、今一度考え直すことをおすすめします。あとの章で述べますが、学歴に実力が伴わないと、世間から非常に冷たい目で見られます。また、院試に受かったからといって、内部進学組の東大生と肩を張れる人はごく一部なのです(リベンジ組は、ここを勘違いしないようにしましょう)。

大学院の入試事情

私が東大院農学生命科学研究科を受験した時のことをお話しします。これから大学院の院試受験をお考えの方は参考にしてください。なお、当然ですが、受験する研究科や専攻によって試験科目は異なりますので、ご注意ください。

受験科目や日程は?

筆者の受験して農学系の学科では、一般教養科目として、理科(物理、化学、生物から2科目)もしくは数学のどちらかを自由に選択できました。英語は、TOEFL-ITP(団体向けTOEFLテスト)を採用しており、こちらを当日受験しました。

上記に加えて、専門科目が2科目課されます。これは、大学で専攻してきた専門科目で、「材料学」や「応用生命化学・工学」など様々です。自分の希望する専攻や研究室が指定する範囲から、自分の得意科目を2つ選択して受験します。

院試の専門科目は、大学3~4年生の専門課程の授業の内容から出題されますので、内部進学組にとっては、定期試験の総復習のようなものでしょう。また、一般教養科目も、東大入試を突破した人なら無理なく解けるレベルです。

大学院入試は、毎年8月下旬に実施されています。学科が2日間と面接1日の計3日を要します。面接は20分程度で、筆者の時は、専攻の教授陣を前に、志望動機や学士課程での卒業研究内容について説明をさせられました。

院試までの準備

6月上旬に大学院の説明会があり、それに参加して受験を決めてから8月末の試験まで約3ヶ月間みっちり勉強しました。7月中旬〜8月は、大学の夏休みを利用して1日12~16時間勉強しました。

筆者は外部から(地方国立から…)の受験でしてので、上記のような勉強時間となりましたが、東大の内部進学者であれば(一般教養は楽勝、専門科目は定期試験の復習)、3週間くらい勉強すれば合格できるでしょう。

一般教養科目は、大学入試用の問題集が使えます。まずは、総復習して基礎問題を確実に押さえた上で、記述問題(特に難関大学向けの長めの記述問題など)を中心に演習しましょう。英語はTOEFLやTOEICの問題集で充分です。専門科目については、一般書籍の問題集はほぼ無いので、過去問を参考に、学生向けの専門書を読み、自分で問題を作っては解くとよいでしょう。

過去問の入手

東大院試の過去問は、大学構内の直接販売所もしくはインターネットを介して購入できます。一般教養科目は1年分300円、専門科目は1年分200円です。

詳しくは公式サイトのFAQにある「過去入試問題の入手方法は?」をご覧ください。

直接販売所は、農学部であれば、校門を入ってすぐのところにあります。わからなければ、門のところに警備室があるので、そこの警備員に聞きましょう。

また、受験した研究室の先輩と既に交流があるのならば、お古の過去問をもらえたり、コピーさせてもらえたりする場合があるので聞いてみましょう。

大学院での生活

大学院生の生活とはどのようなものでしょうか?ここでは、大学院の雰囲気や、学部生時代との授業や生活の違いについてお話しして行きます。

大学院生時代の日常生活

大学院の授業風景は、学部時代と大きくは変わりませんでしたが、より専門的な内容になるため必然的に少人数クラスになり、先生との距離が近くみっちり教わる形でした。授業は指定の教室で、同じ専攻の他の研究室の同期(たまに先輩も…)と一緒に受講していました。

平日は、授業に出席してレポート課題をこなします。論文輪読の授業もあったので、その準備の他、プレゼンテーションの準備が必要な授業もありました。もちろん、学期末には定期試験があるので、その勉強も必要です。

授業は一日みっちり駒が埋まっているわけではなく(※)、1日2~4時間程度ですが、先にも述べたとおり、出席にはそれなりに準備が必要です。そして、授業がない時間帯は、自分の所属する研究室で修士論文のための実験やゼミの準備を行います。

※一日のスケジュールは学科によって大きく異なります。筆者は実験中心の学科だったため、授業より研究室での実験に費やす時間が多かったです。

修士課程での研究

研究テーマは、一般的に、所属の研究室の担当教官と話し合って決めます。その後、定期的に担当教官に進捗具合を報告し、適宜軌道修正を加えながら進めて行きます。

進捗具合は、担当教官と個別に行う場合と、週に1回程度行われる「ゼミ」で教員を含めた研究室のメンバー全員の前で発表する形式をとる場合があります。筆者の所属していた研究室では、細かな内容は適宜(週に2~3回ほど)担当教官に報告しており、大まかな流れと結果報告は、研究室で行われる学期末のデータ報告会で行なっておりました。

修士課程での研究は、学部時代に授業で行う実験とは異なり、結果が狙い通りに出るとは限りません。実験手法などを試行錯誤しながら夜中まで研究室にいることもしばしばでした。

土日祝日もほぼ研究室に通っており、泊まり込むことも珍しくありませんでした(最近では、学生の健康や安全を考慮し、学生が長時間大学に居残ることを禁止する大学や研究室も増えているようです)。

大学院時代の学費や生活費は?

大学院は入学金約28万円の他、一年間に約56万円の学費が必要となり、これを前期、後期に分けて支払います。これに東京での家賃や生活費や交通費等が加算されます。東京での家賃は安くて5万円と考えてください。5万円でもワンルームでユニットバスの狭い部屋がほとんどです(研究生活が忙しいと、部屋には「寝に帰るだけ」になるのですが…)。

東京大学大学院学費の詳細は公式サイトをご参照ください。

大学院生は、様々な方法で生計を立てています。一般的な収入源には、下記の3つでが挙げられます。

  • アルバイト
  • 親からの仕送り
  • 奨学金を獲得

アルバイト

大学院での研究生活は、決して楽ではなく、授業のレポートにプレゼン、そして実験結果を出すことが求められており、なかなかアルバイトの時間が取れない学生も多いものです。

そこで、大学内部でアルバイトをするという手があります。授業のティーチングアシスタントに申し込み、授業中に出席簿をつけたり資料配布をしたり、PCなどの機器操作をするといった仕事を請け負います。また、たの研究室の実験の「被験者」になったり、膨大な単調作業が必要な実験を手伝ったりすることで、小額の謝礼をもらえることがあります。

大学外部でアルバイトをする場合は、家庭教師や塾講師をしている学生が多かったです。講師のアルバイトは高時給のため、短時間のアルバイトで通常の2~3倍は稼げます。東大生ならば、さらに高時給で雇ってくれる塾もあります。

親からの仕送り

親からの仕送りのみで生活するには、実家が裕福でないと難しいです。また、研究生活に対する親の理解も必要です。

親が教員であったりした場合、学問に対する理解がある場合が多く、親自身が子供に大学院進学を勧めるなどして支援しているケースがあります。この場合、(筆者の周りでは)完全に「支援」してもらっているケースと、「無利子で返済」することになっているケースがあります。

筆者も学費や生活費の一部を支援してもらっていました。筆者が大学院に進学する費用については、親から「結婚資金だぞ」と言われ、そのためのお金だったものをもらいました。…そして実際、筆者の結婚にあたっては、非常に質素な式で済ませることになりました(写真館でレンタル0円のドレスを着て、親兄弟だけで写真撮影をして終わり)。

奨学金

実は、大学には様々なタイプの奨学金があります。学費の免除・半額免除、定額利子での借り入れタイプの奨学金、返済不要の奨学金、企業からの支援金また、大学や学部からの支援金など意外と多くの種類があるのです。

ただし、それぞれ一定以上の成績であることが条件であったり、レポートや成果報告の義務が課されている場合も多いので、自分が応募しようとしている奨学金の条件をよく確認しましょう。また、企業からの奨学金の場合は、卒業後にその企業で働くことで返済不要になる場合もあります。

奨学金によっては、併用できないものもあるので、この点には十分注意する必要があります。また、こういった奨学金関連の情報は、大学の掲示板やホームページに事務的に分かりにくく羅列して書かれている場合が多く、決まった期間内に申し込む必要があります。お得な奨学金情報は、自分の所属する学科の先輩から事前に情報を集めておくなどして、目ざとく見つけましょう。

筆者は修士課程時代、「家賃の一部を負担してもらえる」というタイプ奨学金を取得し、スカイツリーが見える好立地でかつ広い部屋のアパートに、月2万円で暮らしていました。奨学金を得る条件として、年末に自分が大学院で行なった研究成果をレポートとして提出する義務が課されていました。

また、博士課程では、「学術振興機構特別研究員」という身分で、お給料をもらいながら学費を払い、研究をしていました。この「学振」は、大学院進学者なら誰しも応募を検討する制度ですが、場合によっては(海外の研究室と共同研究して、そちらに拠点をおきたいなど)その規約によって自身に不利になりますので、早めに公式サイトをチェックしておきましょう。

大学院の恋愛事情は?

理系の大学院に入学すると、研究一色でまったくプライベートがないのでは?と心配される読者様のために大学院生の「出会い事情」をお話しします。華の20代、女性であれば、婚期を逃したくはないですからね…。

大学院時代は研究一色の生活で、浮いた話がひとつもなく卒業する学生も、確かにおります。ですが、筆者の所属していた研究室内部または専攻内にもカップルは数組いましたし、ご結婚された方も数名おります。

また、筆者は大学内の全大学院生対象(専攻の枠を超えて)の授業を受講しており、そのディスカッションやディベートを介して人間関係の輪を広げておりました。院生で新たにサークルに入る人は珍しいですが、中には院生歓迎の勉強会(サークルのノリでの自主的な討論会など)もあります。

上記の集まりは、決して「勉強会という名の合コン」ではなく、真剣に勉強する気持ちのある学生同士の集まりです。しかし、だからこそ、本気で意見を言い合い討論することで、互いの視点や信念を知り、その相手に興味を持ってお付き合いに至るケースもあるのです。

ちなみに、筆者は研究室の秘書として働いていた方に、別の研究室の学生を紹介してもらって、卒業してから結婚しました。研究内容が近かったので、最初の話題に困ることもありませんでしたし、研究者の生活や忙しい時期についても理解があったので、スムーズに新婚生活をスタートさせられました。

東大院卒のメリット

研究環境として、東大はとても恵まれた環境です。他の大学に比べて、研究資金を潤沢にもつ研究室も多いですし、ノーベル賞候補の高名な先生もおります。何より、周囲に本当に優秀な内部進学組の東大生がいるので、自分も必死についていくために頑張らざるを得ない環境にあります。

将来研究職に就くとしたら、たとえ大学院からでも「東大」はブランドになりますし、○○先生の下で何年学んだということが実績になる場合もあります。

海外でも、Tokyo-Universityといえば、一定の評価が得られます。一方、国内ではそこそこ有名な大学でも、東大以外の大学名は認識すらしてもらえないことがほとんどです。

また、卒業後、企業に就職する場合も、学歴がある程度有利になるといえるでしょう。卒業大学と大学院のレベルに相当なギャップがある場合はわかりませんが、無名大学卒よりは、とりあえず目に留めてもらえる可能性は高くなるでしょう。

ただ、年齢と専門性を考えると、博士課程まで修了した人間にとっては、就職の門が狭くなります。日本企業に就職する場合は、修士卒が最も売り込みやすいです。

東大院卒のデメリット

外部の大学から東大大学院入学した場合、内部進学組との間に圧倒的な学力差があることは否定できません。筆者も休日返上で休みなく頑張りましたが、その差は歴然としていました。内部進学組とは、「積み上げてきたものが違う」と思いましし、「生まれ持ってきたものが違う」とも思いました。

世の中では「東大院卒」でも、学部からの東大生とそれ以外で分けて評価するのが常識になっています。「東大院卒」の履歴を持ちながら、東大生に期待されるほどの実力がない人間が少なからずおり、社会に出てからガッカリされることが多いのでしょう。

筆者のように、地方国立大学等から東大の大学院に入って、「最終学歴」を更新する人間を、ネットスラングでは「学歴ロンダリング」といい、まるで不正をしたように揶揄されます。

ネットの世界だけでなく、現実も同じです。期待に応えられなければ、「お前、ロンダかよ…」と、あからさまな軽蔑の眼差しを向けられたことも一度や二度ではありませんでした。

20代の貴重な時間を研究室で過ごし、社会人経験を積んでこなかった人間が、その学歴も武器にならないとすると、悲惨な将来が待っています。東大院を卒業して学者としての道を歩むのか、ロンダと言われることに耐えながら徐々に社会人としての実力をつけるのか…、どちらにしても険しい道が待っています。

筆者はドロップアウトして農家になりましたけどね!!!!!

まとめ

ここまで、大学院入試から大学院での生活、そして学歴をリベンジ更新することのメリット・デメリットについてお話ししてきました。筆者は文系学部のことはわかりませんし、理系同士でも学科や研究室によって忙しさや思想が全く異なることもあります。ですがら、筆者と似た経歴をもつ人でも異論があることもあるでしょう。

あくまで、ご参考になさってください。

  • 大学院の入学試験は専門科目重視
  • 東大の大学院は研究するには最高の環境
  • 内部進学組と、外部からの入学組には学力差がある
  • 大学院でもでそれなりに出会いの場はある
  • 学歴があると、高時給バイトができたり就職活動にはそれなりに有利
  • 高学歴だからといってバラ色の人生になるとは限らない

おわりに

世の中には、専門的な領域で凄まじい実力を発揮する人がいます。また、その「天職」ともいえる研究分野に大学時代に出会う人もおります。ですから、大学入学時点ではパッとしなくても大学時代に実力が伸び、大学院から東大に進学して実績を残す人がいるのも事実です。つまり、その専門分野で勝ち残れる圧倒的な実力があればそれでいいのです。

ですが、「東大」に入学しさえすればバラ色の人生が待っているわけではありません。圧倒的に「勝てる」分野もなく、倍率の低そうな学科を選んで最終学歴を更新しても、その後の人生は「イージーモード」になるわけではありません。よりハードな競争に巻き込まれて、落ちこぼれるか燃え尽きるのが関の山です。

ただし、自分の最終学歴を更新する目的でなく、あくまで自らの本心として「学びたい」という分野があれば、東大は最高の環境です。院試は東大の一般入試よりも倍率が低く、科目数も少ないので合格の可能性は高いです。頑張ってください。周りがなんと言おうが、是非飛び込んで、その分野の第一人者、教授、研究者陣の中で学び、議論してください。学費を払って学ぶ権利を得た者を非難する権利は誰にもありません。ガツガツレポートを出して、プレゼンして、ボロクソに批判されて、泣いて泣いて笑った日々は人生の糧になるはずです。

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