子供の部活は何を選ぶ?吹奏楽部のメリット/デメリット

習い事

令和二年は、新型コロナウイルスの影響で、多くの学校の新学期が5月下旬から6月のスタートとなりましたね。今年、中学校に進学する子供たちは、今頃、初めての「部活」選びにドキドキしているのではないでしょうか。

人によっては、部活動を通して一生の友や生涯の趣味やスキルを得る人もおり、人生の財産ともいえる経験をを獲得できることもあります。また、中学の部活動で初めて本格的な上下関係や厳しい練習を経験するという子供もおり、部活での人間関係が大きなトラウマとになったという人も少なくはありません。

親の立場としても、「子供に思いっきり体力をつけさせたい」とお考えの方から、「勉強と両立できる範囲で…」とお考えの方まで様々です。運動部で体力・精神力を鍛えるのか、文化部で知識を身につけるのか、それとも芸術系の部活でセンスを磨くのか…部活選びにはつい口を出したくなりますね。せっかくですので、親子で話し合ってよく選んで決めたいところです。

今回は、中学・高校で吹奏楽部を経験した筆者が、そのメリット・デメリットについてお話しします。吹奏楽部は、文化系の部活といえど、大会(コンクール)を目指しての厳しい練習に加え、「一軍」「二軍」の別や、先輩との上下関係などは運動部さながらで、「体育会系文化部」と揶揄されることもあるほでです。吹奏楽部での人間関係や、練習と勉強の両立などをよく考え、入部の際は後悔のないようにしたいものです。

吹奏楽部とは?

「吹奏楽」とは、主に管楽器(息を吹き込んで音を出す楽器で、木管楽器と金管楽器があります)と打楽器の編成で演奏される音楽です。そして、「吹奏楽部」とは、このような管楽器の演奏によって合奏を楽しんだり、コンクールに出場したりすることを目標に練習をする部活です。ピアノのような個人での演奏と異なり、20~50名の部員全員で息を合わせて合奏を行うことが特徴です。

演奏の形態は、全員で演奏を行う合奏の他、少人数で演奏するアンサンブル、一人で演奏するソロもあります。それぞれ、合奏のコンクール、アンサンブルコンテスト、ソロコンテストがあり、希望者は出場できます。

また、コンクールの他、学校によっては「マーチング(楽器を演奏しながら行進する)」に力を入れている場合もあります。その場合は、屋外で行進するための練習も必要になってきますので、かなり大変な部活であるといえるでしょう。

吹奏楽部で扱う楽器

吹奏楽部では、個々人に担当の楽器があり、特別な事情がなければ卒業までその担当は変わりません。(なお、打楽器は例外です。「打楽器」の範疇で、ドラムやトライアングルなど様々な楽器を担当します。)

ここで、一般的な中学・高校の吹奏楽部で扱う楽器の種類をご紹介します。

  • 木管楽器:フルート、クラリネット、サキソフォン
  • 金管楽器:トランペット、ホルン、トロンボーン、ユーフォニウム、チューバ
  • 打楽器:ドラム、ティンパニー、マリンバ、シンバル、スネアドラムなどなど
  • 弦楽器:コントラバス

各楽器に割りてられる人数は、(その学校の吹奏楽部の規模にもよりますが)中規模編成の楽団の場合、各楽器5~6人です。楽器によっては、1~3人というパートもあるため、場合によっては希望の楽器を担当できないこともあります。

吹奏楽部を選択する子供はピアノを習っているケースが多いですが、上記のような管楽器を習っているケースは稀で、ほとんどの生徒が初心者として練習をスタートします。

オーケストラとの違いは?

学校によっては、吹奏楽部でなくオーケストラ部がありますが、この違いはなんでしょうか。…吹奏楽とオーケストラは、楽器の編成が異なります。吹奏楽は、文字通り「吹いて音を出す」管楽器が中心の編成ですが、オーケストラはバイオリン、チェロ、ビオラなどの弦楽器が編成に加わります。

また、吹奏楽部とオーケストラ部では扱う曲目に違いがあります。吹奏楽部では、割とポップな曲を扱うことが多いの対し、オーケストラ部ではクラシック音楽を扱うことが多い傾向にあります。もちろん、吹奏楽部でも、クラシック音楽を吹奏楽曲としてアレンジしたものを演奏することはありますし、逆もしかりです。

…ですが、クラシックの演奏に憧れて吹奏楽部に入部したのに、流行りの曲のアレンジやディスニーメドレーが演奏の中心で、「思っていたのと違う…」という印象を持つかもしれません。がっかりしないためには、自分の入部したい楽団の定期演奏会を聴きに行くなどして、扱っている曲目の傾向をチェックしてみることをおすすめします。

練習は大変?

吹奏楽部は、毎年夏に大会(コンクール)があり、地区予選を勝ち抜くと全国大会に出場できます。コンクールで実績を作ることを目標にしている部は、当然練習量も多くなり、厳しい部となります。

コンクールは、地区予選、県大会、全国大会などがあり、出場校中で上位数校が金賞、中位が銀賞、残りが銅賞として評価されます。金賞受賞校の中でトップ数校が、次の大会に出場できます。(何校を“トップ”とするかは、地区によって異なります。なぜなら、学校が密集している地区と過疎の地区があるからです。)

コンクール実績は、顧問の先生や現部員に聞けばわかります(地区で金賞、県大会で金賞、全国大会金賞など)。部活の厳しさを判断する材料になるでしょう。また、その部活が「コンクールで実績を残すことに熱意的な部」であるか、「楽しく音楽を奏でる部」であるかといった、顧問の指導の方向性によっても練習の大変さは異なります。勉強と両立する場合は、しっかり確認しておきましょう。良くも悪くも、その部活の毛色は、顧問の方針によって大きく左右されます。親御さんと顧問の方針が合わないと、子供が板挟みになって辛い思いをしますので、顧問の方針に親側な納得できるかどうかも重要です。

吹奏楽部で身に付くこと

部活動を通しての経験は、体力・精神力を鍛えたり、人間関係の基礎を学んだりと、多方面において人生の土台作りに影響するでしょう。ここでは、吹奏楽部では、どのようなことが身につくのかといった疑問に、筆者の経験談からお答えしたいと思います。

音楽の基礎が身に付く

吹奏楽部では、毎日譜面を読み、楽器を演奏する訓練をします。もし、これまでに楽器の経験がなかったとしても、次第に慣れていくでしょう。半年もすれば、譜面を読むことに抵抗がなくなり、拍子をとったり、楽器のチューニングをしたりという基礎が身につきます。楽曲を演奏する頃になると、音楽用語もそれなりに覚えていることでしょう。

社会性が身に付く

吹奏楽部での合奏は、ひとりでは成立しません。まずは、同じ楽器の仲間と練習し、「曲のこの部分はどの様に演奏するのが適切か」などと話し合いながら、息を揃えていきます。やがて3~50人規模での合奏を行うため、他人と協調することが重要になってきます。

また、吹奏楽部は運動部並みに上下関係が厳しい場合も多く、筆者の知る限り(筆者の中学および周辺校)では、時間厳守である他、挨拶や敬語も徹底されておりました。吹奏楽部で三年間過ごすと、このような社会人としての基礎の基礎(最初の一歩)が身に付くといえます。

吹奏楽部を選ぶメリット・デメリット

ここで、「親の視点」「子供の視点」から、中学の部活動で吹奏楽部を選ぶことのメリット・デメリットについてお話しします。子供が吹奏楽部への入部を考え中の場合は、参考になさってください。

子供にとってのメリット

楽器に触れられる
管楽器は個人で購入すると、安くても数万円の費用がかかりますが、部活で使う楽器は学校が用意してくれます。ご家庭で楽器を購入する余裕がない場合も、部活を通して憧れの楽器に触れることができます。

体力・肺活量が鍛えられる
吹奏楽部で管楽器の練習を積むと、体力・肺活量がアップします。楽曲を数曲こなすには、かなりの体力がいるため、学校によっては校庭を走らせたり腹筋を鍛えたり、実際に生徒に運動をさせる顧問もおります。

・社会性が身に付く
先の項で述べましたが、吹奏楽部では合奏を行うということは、他人と協力してひとつの音楽を作るということです。団体での行動を成立させるための社会性が身につきます。

・知っている曲が増える
吹奏楽部では、流行りのポップな曲の他、クラシックやジャズのアレンジ曲、映画の主題歌なども扱います。顧問から曲の作者や背景について解説してもらえることもあるので、有名どころについては詳しくなれます。大人になってから、喫茶店で流れている曲など、ふとした瞬間に「あ、この曲演奏したことある!」と思うことも多くなるでしょう。話題の引き出しがちょっと多いということで、得をすることもありますよ。

子供にとってのデメリット

・勉強との両立が大変
部活動の大変さは、その学校の吹奏楽部の顧問の方針にもよりますが、コンクールで金賞を取るレベルの部だと、練習もかなりハードなものになります。朝練に夕練、そして休日は一日練習…ということになると、当然勉強する時間が削られまし、家に帰るとクタクタに疲れて勉強どころではありません。帰宅後も、部活の宿題や譜面のコピーなどの雑務をせねばならないこともあるのです。

・人間関係が複雑になることも
吹奏楽部は部員数が多いため、人間関係が複雑になることがもあります。ひとクラスより多い部員が集まる部活内では、生徒同士の「グループ化」やいじめ、度を越した上下関係など、学校に行くのが辛くなってしまう事態もないとはいえません。

また、部員数が多くかつコンクールでの実績ある吹奏楽部の場合、生徒が「一軍」「二軍」に分けられていることがあります。これは、野球でいうところのそれと全く同じ意味で、「一軍」はレギュラーで、コンクール出場メンバーです。筆者の所属していた部では、このレギュラー戦をめぐって、人間関係に亀裂が入ることも珍しくありませんでした。

・野球応援に駆り出される
これは、人によってはメリットと感じるかもしれません。ただ、筆者にはこれが大変辛かったのを覚えています。炎天下、砂埃が舞うなかで何曲も何曲も吹くため、日焼けして、口の中は砂だらけで舌はボロボロ、さらに楽器も痛むのでかなり憂鬱でした。筆者のようにトランペットを選ぶと、野球応援は避けて通れない場合もあるので覚悟しましょう。「運動部は嫌だから室内でできる部活にしたのに…」と後悔するかもしれません。吹奏楽部で金管楽器希望の場合は、野球応援の有無も確認しておきましょう。

・男女比率が大きく偏る場合も
共学の場合、30人以上いる部員の9割以上が女子という場合もあります(筆者の所属していた吹奏楽部もそうでした)。その場合、男子は(周りが女子ばかりでも全く気にしないという場合はよいのですが…)ちょっと居心地が悪いかもしれません…。そして、男子は半強制的に重い楽器を担当させられる場合が多いです。男子で吹奏楽部希望の場合は、男女比率をチェックしてから、自分の気持ちと相談して入部を決めましょう。

親にとってのメリット

・休日も子供が学校に行ってくれる
吹奏楽部は、朝練、夕練(放課後)、そして土日も練習があることが多い部活です。子供が土日も学校に行ってくれるので、共働きのご家庭にとっては部活が学童代わりになって便利です。

子供に家事をさせたい家庭にとってはデメリットという見方もできますが、どこで誰と遊んでいるかわからないよりは、学校の部活に行っている方が安心です。

・家族で楽しめる
吹奏楽部は、多くの場合、文化祭での演奏や定期演奏会を実施しています。子供の練習成果や成長を演奏を通して感じることができる良い機会になると思います。親御さんも楽器奏者の場合は、将来同じ市民楽団に入って一緒に演奏できるかもしれません。

スポーツ観戦となると、おじいちゃん、おばあちゃんもは辛いかもしれませんが、室内での演奏会なら、一緒に楽しめますよ。

親にとってのデメリット

・朝練に合わせて起きるのが大変
普段の練習には、授業前の「朝練」、放課後の「夕練」があります。朝練がある場合、(そして中学校に給食がない場合)早朝に起床してお弁当を作らねばならなかったり、休日も練習があるため、子供のために早く起きなければならないのは辛いかもしれません。

・演奏会の会場までの送迎が大変
コンクールや定期演奏会の際は、自動車をお持ちの家庭の親が、楽器運搬に駆り出せされる場合があります。これはボランティアなのですが、半強制のような面があり、親としてはせっかくの休日を潰されてイライラするかもしれません。

・費用がかさむ
吹奏楽部で使用する楽器は学校が用意してくれますが、その他の小道具(譜面台や、楽器のメンテナンス用オイル、リードなど)は自費のため、それなりにお金のかかる部活であるといえます。演奏会会場費などに、寄付を求められることもあります。

まとめ

筆者の所属していた吹奏楽部は、文化部でありながら運動部さながらの練習量と上下関係がある厳しい部活でした。理不尽に耐え、社会性が身に付けることができることをメリットと捉えるかデメリットと捉えるかはひとそれぞれです。

もし、子供が吹奏楽部への入部をお考え中であれば、進学先の吹奏楽部が、「コンクールで金賞」を目指すのか、「みんな仲良く音楽を楽しむ」ことを目指すのか、部の方針を知っておくことをおすすめします。

  • 吹奏楽部とは、主に管楽器と打楽器で編成される音楽を奏でる部活動
  • 体力、精神力、そして社会性が身に付く
  • 部員数が多くレギュラー選抜もあるので、人間関係が複雑になりやすい
  • そこそこお金のかかる部活である
  • 休日の練習も多く、勉強との両立が大変
  • コンクールや演奏会の際は、親も駆り出される場合がある

おわりに

筆者が吹奏楽部に入部した動機は、「団体戦を経験することで協調性を身につける」ためです。筆者はもともと一人でグイグイ進んでしまうタイプだったため、先生に「協調性」を指摘されたことがきっかけでした。

ただ、練習量が多く勉強との両立が難しくなって成績が落ち、家庭では親から毎日「部活を辞めるように」と迫られるようになりました。しかしながら、自分の「役割」がしっかり決まっている吹奏楽部は、辞めることが難しく、顧問も先輩も怖かったので相談もできず、青春時代は毎日が修羅場でした。

吹奏楽部への入部を考えるとき、真っ先にご検討いただきたいのが「勉強との両立」です。もし、子供が「吹奏楽部」を入部候補に挙げているのなら、練習のハードさを顧問に聞いてみるなどして、両立できるか親子でよく考えてから入部しましょう(入ってから辞めるのは、その後の学校生活を考えた時のストレスが大きいので)。

筆者は協調性という「弱点の克服」を目的として部活を選びましたが、今思うと「好きなこと」を伸ばすことに時間を使った方が有意義であったように思います。弱点を克服するために部活や習い事を増やしても、「すべてが平均的にできるだけ」の子供になるだけです。

「好き」を伸ばせば、スキルも上がり、今はインターネットを介して副業につなげることも可能です。自分(または自分の子供)の悪いところにばかり目がいって、直すことに躍起になるより、その弱点を補って余るほど、良いところを伸ばすことを、筆者は推奨します。

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