子供の習い事としてそろばんはおすすめ?珠算1級取得者が解説する「そろばん塾」!

習い事

一昔前は、「読み・書き・そろばん」とも言ったように、「そろばん」はメジャーな習い事のひとつでした。時代が令和となった今、子供の習い事は、ピアノやサッカーなどに加えプログラミング、フィギュアスケート、それに子供のYouTube動画作成教室など多岐に渡ります。

テレビで豊かな才能を披露する子供を見ると、「うちの子にもぜひ!」という気持ちになってしまいますよね。でも、それができることのメリットはかけるお金や練習量(=時間)に見合うものでしょうか。

また、昭和生まれの筆者世代が(さらに上の世代の)親に勧められてやってきた習い事が、令和を生きる子供たちにも勧められるかといったことは、一度立ち止まって考えるべきでしょう。

今回は、昭和世代にはメジャーな習い事であった「そろばん」についてお話しします。子供への習い事として、「そろばん」が選択肢にある方のために、小学校時代に珠算1級を取得した筆者が、社会人になって振り返ってみて、「そろばん塾」に通った実体験を元に、身に付いたこと、イメージとは異なったことなどをお話ししたいと思います。

そろばん塾(珠算塾)とは?

「そろばん塾(珠算塾)」とは、計算機を使わず、「そろばん」を使って四則演算を速く正確にこなす能力を身に付けるための塾です。

計算道場・練習場ともいえます。計算能力がレベルアップした暁には、日本珠算連盟が主催する試験を受け、「級」「段」を取得することができます。「そろばん塾」では、各生徒の級に合わせた練習問題をひたすら解き、検定試験合格を目指します。

「そろばん塾」にかかる費用

「そろばん」は、比較的低い費用で習得できる習い事に入ります。まず、初期費用は、そろばん 1,000円と問題集 1,000円〜2,000円。月謝は、地方にもよりますが、4,000円〜10,000円が一般的でしょう。筆者の通っていた塾は月・水・金の週3日で3,000円〜4,000円(級が低い間は月謝も安い)でした。

その他、級が上がる毎に問題集を買い替える代金(1,000円〜2,000円)、検定試験の代金(10〜1級:800円〜1,000円、段検定:1,700円)がかかります。

楽器やスポーツと異なり、初期費用をかなり低く抑えられること(そろばんはおばあちゃんに、問題集は上級生にもらえることも)や、大会でも特に衣装の準備が必要ないことが利点です。

「そろばん」を習う目的は様々

習い事は、一度始めるとモノにするまでに多くの時間や努力を必要とします。自身がそろばんを習う目的と、教室の方針が合っている事がとても重要です。

例えば、子供にサッカーを習わせる場合、その目的が「体力をつけさせたい」「チームプレイの経験をさせたい」、または「プロとして収入を得るプレーヤーにしたい」のかで教室やコーチ選びも変わってきます。そろばんも同様に「全国大会に出る計算選手になるか」、「日常生活を便利にするか」で練習量が変わってきます。

そろばんにおいても、「珠算大会で一番になりたい」「人前でフラッシュ暗算を披露したい」、「就職に有利な能力をつけたい」など、習う目的も様々です。習う目的を明確にし、それに応じた教室選びや練習量を心がけましょう。

そろばんは本来商業的な目的で習うもの

「そろばん」は、もともと商売に役に立てるための実用的な習い事です(昔は商店でも銀行でもそろばんが使われていました)。

問題・回答用紙には、しっかり「¥」マークが印刷されていますし、3級以上では「伝票算」があります。「1円なり〜、2円なり〜」と読み上げることからも、「お金の計算をできるように」が目的にあることは明確です。

現代における「そろばん」という習い事の位置付け

現在、銀行や会社のオフィスでは、間違いなく「そろばん」ではなく電卓やエクセル、経理ソフトが使われています。社会に出てから「そろばん」を直接使用する機会はほぼないといっていいでしょう。

それでも、数字に慣れ、数字に強くなることや、暗算(フラッシュ暗算などを教えるそろばん塾もあります)に強くなることで、受験やオフィスワークに活かされます。

また、個人的に計算それ自体が得意・好きで、全国の猛者と競いたい方は、そろばん塾に通うことでそのスキルを磨き、選手として大会に出場する機会を得ることができます。

「そろばん」の級・段を持つメリット、デメリット

そろばんの級は「資格」ではないが、英語でいうところの「TOEIC何点」のように、計算力において一定の能力があることを示すものです。会計、経理など数字を扱う仕事をするのであれば、好印象を与えられるでしょう。

メリットとしては、1級を取得すれば商業高校への推薦を取る時に有利になると言われています。また、更新制ではありませんので、一度取得すれば永久に履歴書に書けます。しかし、当然ながら練習しないと能力はすぐに衰えます。大昔にとった「そろばん1級」を安易に履歴書に書くと、赤っ恥をかくのがデメリットでしょう。

あなたが子供に「そろばん」を習わせたい理由は?

一般的に「そろばん」の習得は、スポーツと違って「それを極めて世界一になる」ことを目的とするのではありませんし(世界一になってもコンピュータに勝てないでしょう)、ピアノやバイオリンのように「人前で披露する」ことを目的としてもいません。

その道を極めれば「先生になる」「暗算の達人になってYouTubeで有名になる」など、それ一本で食べていく道もあるかもしれません。…が、「そろばん」の場合は、多くの場合それ一本は厳しいでしょう。

「そろばん」を習うことで、計算力を鍛えたり集中力を強化したりと、現代を生き抜く上でも必要なスキルが身につきますが、場合によっては、「そろばん」よりプログラミングをはじめ、コンピュータを使った計算を習得する方が得策かもしれません。

習い事を始める前に、その「目的」と「習得してどうなりたいか」を明確にしておくことが重要です。あなたのイメージするスキルは、「そろばん」で本当に身に付くのか今一度考えてみましょう。

そろばんの検定試験のレベルや科目は?

日本珠算連盟が主催する検定試験は10級〜1級(準3級、準2級および準1級を含む)があり、1級以上は初段〜10段…と段位が上がっていきます。小学校低〜中学年までにスタートすれば、卒業までに1級、少なくとも3級までは取得できるはずです。

そろばんの検定試験科目

そろばんの検定試験科目には、掛け算・割り算・見取り算(足し算・引き算)そして伝票算あり(級が低いうちは無い科目もあります)、ひとつの科目につき10分間の制限時間が与えられ、所定の問題数をこなします。100点満点で、各級に定められた点数を取得れば合格です。昇級する毎に計算科目が増え、さらに計算問題の桁数が上がったり小数点以下の数字が加わることで、難易度が上がっていきます。各級の検定科目は、以下の通りです。

  • 10・9級:掛け算、見取り算
  • 8〜4級:掛け算、割り算、見取り算
  • 3級以上:掛け算、割り算、見取り算、伝票算

各級の検定問題サンプルは日本珠算連盟公式HPで確認

各級でどのレベルの計算ができるようになるかを知りたい場合は、日本珠算連盟の公式ホームページにアクセスしてみましょう。検定試験のサンプルがご覧いただけますよ。

検定試験問題見本(日本珠算連盟)へのリンク

1級習得までの練習量

さて、そろばんを始めてから1級を取得するまでにはどのくらいの練習量が必要なのでしょうか。私の場合は、小学校3年生の中盤でそろばんを始め、6年生で1級を取得しました。平日は月・水・金の週3日、放課後に直接そろばん塾に通い、毎回(掛け算・割り算・見取り算・伝票算をそれぞれワンセット or ツーセット+間違えた問題の解き直し)約1時間半ほど練習していました。

10級〜5級まではストレート、4級は2回目で合格、3級は1発、2級で何度か足踏みし、1級も2回目で合格しました。私のペースは、ほぼ一般的なペースといってよいでしょう(同じ教室の同級生と比べると、エースでも劣等生でもありませんでした)。

大会

検定試験の他に、日本珠算連盟主催の競技大会に出場することができます。全国大会の覇者となれば超人的な速度で計算をこなす猛者といえます。

「小学生日本一」など、ある程度の年齢制限の範囲内でトップを競う部門と、制限なしで競う部門があります。小学生でも数段を保有するなど、子供でもかなりの実力者がいるのが珠算の世界。子供から師匠クラスの大人まで計算の猛者が集い、机上といえど凄まじい迫力ある戦いが繰り広げられます。

そろばん塾で身に付くスキルは?

そろばんを習うことで身に付くスキルは、なんといってもやはり計算力です。本を読むのが速くなるには、日常を通しての読書が欠かせないように、計算が速くなるには日頃から数字に親しんでおくのが得策です。

足して10になる組み合わせが、数字を見た瞬間にパパッと浮かぶようになったり、検算のコツが自然に身に付きます。ただし、暗算のスキルは「そろばん」を使った計算スキルとは別物ですので、ここには注意しましょう。

「そろばん」のスキルは高校・大学受験に役立つ?

ところで、「そろばん」で習得したスキルは高校・大学受験で役に立つのでしょうか。…当然ながら、入試会場に「そろばん」は持ち込み禁止です。ですが、そろばん塾では、一定時間内に集中して計算練習を行いますので、自然と集中力が身に付きます。さらに、試験会場はかなりの緊張感がありますので、小学生から試験慣れ(試験の雰囲気慣れ)しておけるメリットはあると言えるでしょう。

読者様の中には、「そろばん」⇨「数字」⇨「算数・数学」と連想する方もいらっしゃる方もしれませんが、先にも述べたとおり、「そろばん」の習得は本来、商売においてお金の計算を速く・正確に行うことを目的にしています。したがって、数学的思考力(図形や方程式、証明など)の習得とは別物です。ですが、そのような数学の問題も、解き方がわかってから鬼のような計算が求められる場合も少なくないので、計算力はあって損はないでしょう。

「そろばん」のスキルは社会人になってから役立つ?

「そろばん」のスキルが社会人になって役立ったと感じることはあります。それは、桁を見て、百万、千万、億と桁がパッとわかることなどです。要は、桁に目が慣れてくるのです。社会人になって大きな額を扱う時に、意外とある「桁の間違い」という単純でありながら重大なミスに一瞬で気づくことができるでしょう。

「そろばん」を続けているうちに級が上がり、扱う桁数が上がるとはじめは「ギョッ」としますが、徐々に慣れていきます。そのうち億の数字を見ても「ビビらなく」なるのです。「そろばん」を使った計算それ自体をオフィスで行うことはありませんが、潜在的に「鍛えられている」状態になるでしょう。

暗算の達人になれる?

意外に思うかもしれませんが、そろばんを何年も習って昇級したからといって誰もが暗算も速くなる訳ではありません。「そろばん」を使って(つまり指を動かして)、計算する能力が上がっても、暗算力が伸びない子供もいます。筆者もその一人で、暗算力は壊滅的です。

…水彩画が得意だからと言って油絵も描けるとは限りません。ケーキが焼けるからといって家庭料理も上手とは限りません。それらはスキルが異なるからです。

もちろん、「そろばん」の級をを習得する過程で毎日計算練習をすれば、ある程度暗算も速くはなります。…しかし、「そろばん」という道具を用いて計算をするスキルと暗算はあくまで別物と考えてください。暗算力の強化が目的で子供を「そろばん塾」に入れる場合は、しっかり「暗算にも力をいれている教室」を選びましょう。

※「そろばん」の級検定と「暗算」検定は別物です。

目的別そろばん塾の選び方

昭和生まれの私の時代は、学童代わりに「そろばん塾」に通わせていた親も多かったように思います。ただし、今は多種多様な習い事があり、その中で「そろばん」を選び、時間を費やす意味を考えしょう。

学童としての「そろばん塾」

昇級のための「そろばん」の練習は、機械的な計算練習です。基本的な「そろばん」の使い方を習得すれば、普段の練習は自宅でもできます。したがって、普通の子供にとって「そろばん塾」は「集中力を伸ばす練習の場」と言っても過言ではありません。

少し一般論になりますが、教室選びの際は、上手に子供の競争心を刺激し、級(ステージ)が上がる喜びを与え、気が付いたら自然に計算力も身に付いている状態に導いてくれる先生を選びましょう。子供が笑顔で教室から出てくるようなところで、且つ実績のある教室がよいでしょう。

珠算塾の大会実績を伸ばすためにビシビシ訓練する方針の塾だと、子供が習い事を嫌になってしまいます。そうなると、教室に行ってもただ指を動かすだけで、最悪数字を見るのも嫌になってしまうでしょう。

計算力を強化したい

子供の中には、特別数字が好きで計算が得意という子もいます。親がそれに気づき、伸ばしてあげたいと考え、また子供もそれを望む場合は、実績重視で教室を選びましょう。訓練の雰囲気が出来上がっており、強い競争相手がいる空間では、周りに引っ張られて本人の実力も上がります。

その場合も、先生や教室の方針と子供の「相性」はよく考慮しましょう。筆者も、一度「そろばん塾」を変えています。先生が変わってから、飛躍的に昇級スピードが上がりました。

子供の暗算力を伸ばしたい

先にも述べましたが、「そろばん」を使った計算力と暗算力は異なります。子供の暗算力をつける目的で「そろばん塾」をお考えの場合は、「暗算・フラッシュ暗算」に力を入れていることを明記している教室を選びましょう。

こんな子供には特におすすめ

子供には、脳が柔軟で覚えの良い貴重な時代を、有意義に過ごさせてあげたいものですよね。子供の特性と習い事の相性を考慮して、能力を伸ばしてあげましょう。

私が考える、「そろばん塾」が合っている子供は以下の通りです。

  • もともと数字に親しみがある子供、計算好きな子
  • 「速く・正確に」作業することが快感がタイプの子供
  • 競争や昇級に対して燃える子供
  • ひとりで頑張れるタイプの子供

「そろばん」はチームプレイでなく一人で練習し、基本的に一人で戦います(珠算塾対抗の大会などもありますが)。黙々と続けていく作業が好きでその能力を伸ばしたい、そもそも計算が好きで大会に出てみたいという子供には向いていると思いますよ。

算数の苦手を克服させられるか

「そろばん」の訓練は、計算力を鍛えるものです。小学校2年生くらいであれば「九九」を超特急で唱えてクラスの注目を集め、それがやる気につながることもあるでしょう。

ただし、確率の考え方や文章題などの「数学的思考」はまた別の力ですので、算数・数学の力をつけたい場合は、「算数・数学塾」を検討しましょう。筆者は、小学校3年生では年末の学力テストで算数100点を取って注目されましたが、高校数学は赤点スレスレで、大学入試では数学以外の科目を選択できる学部を受験しました。

まとめ

ここまで「そろばん塾」で身に付くスキルやメリット、そして、意外と身に付かない力などについて解説してきました。記事の内容は、「そろばん塾」に対するあなたのイメージ通りでしたか?それとも違ったでしょうか?習い事を選ぶときは、伸ばしたいスキルを明確にし、目的に合った内容を体験し学べるかどうかを重視しましょう。

  • 「そろばん塾」とは、そろばんを用いた計算方法を教え、練習を積む場である。
  • 受験や就職に活かすのか、大会で1位を目指すのか、目的を明確にして教室や練習量を決めることが重要。
  • 「そろばん」で身に付く能力は商売に便利な計算力であり、数学的思考力とは別である。
  • 社会に出て「そろばん」を直接使うことはなくても、「計算力up」「集中力up」「試験慣れ」 などのメリットがある。
  • 孤独に淡々と頑張れる子供に向いている。
  • 「そろばん」を使った計算力と「暗算力」は別である。したがって、「暗算力」上げたい場合は、しっかり暗算力を訓練してくれる教室を選ぶこと。

おわりに

計算が得意な人がさらなるテクニックを磨いたり、苦手な計算が数字に親しんだり…、「そろばん」を習う目的は人それぞれです。ですが、「苦手克服」が目的の場合は、少し待ってください。

子供が「計算が苦手だから」そろばんを習わせようとしているならば、計算をしてくれるコンピュータの扱いを習わせた方が良いかもしれません。プログラミングやエクセルのマクロを習得して自動計算する仕組みを作る方が、その子にとっては面白いかもしれません。

現代では苦手な計算を頑張って「人並み以上に」できるようにする必要はなく、電卓やエクセルに頼れば良いのです。「苦手だから練習して克服」するより、「好きなこと・得意なこと」を伸ばした方が、社会的競争に勝てる時代になってきています。

振り返って「習ったけど習いっぱなし」では、子供時代が勿体無さすぎます。将来、「そろばん」を直接的には使わない道を選んだとしても、「集中力がついた」「先生から人生を教わった」など、習い事を通して子供たち人生が豊かになることを願うばかりです。

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