子供の習い事にピアノは本当におすすめ?社会人になって振り返メリット・デメリット

習い事

昭和から平成、令和に至る現代まで、「ピアノ」は子供の習い事として根強い人気を誇ります。同じクラスにピアノを習っている生徒が複数いたというケースは珍しくないはずですし、実際にご自身がピアノを習っていたというケースも多いでしょう。

…ですが、大人になってピアノを続けている人は一体どれだけいるでしょうか?あなた自身がピアノ経験者の場合は、習得にかかった費用や時間を、その後の生活を通して「回収」できたと感じているでしょうか?子供の習い事としてピアノを検討される場合は、今一度立ち止まって考えてみる必要があるでしょう。

少々キツい言い方になりますが、「子供にピアノを習わせる」ことが親のステータスになっていませんか。確かにピアノを習っている子供がいる家庭には「優雅」「優等生」「上流階級」のようなイメージがあり、子供が人前でピアノを披露できると鼻が高いですよね。逆に「ピアノくらいは習わせておかないと…」と、一般教養の範疇として「とりあえず」レッスンに通わせている親御さんもいらっしゃると思います。

筆者の体験上、「習いっぱなし」になっている人口が多いのもまたピアノだと思います。子供にピアノを習わせるのであれば、ピアノのレッスンを通して身に付くことや将来性を考慮した上で、納得して時間とお金を費やしたいものです。

本記事では、かつてピアノを習った経験のある筆者が、ピアノを習うメリットや身に付くスキル、デメリットについてお話ししたいと思います。

ピアノ教室とは?

ピアノ教室とは、ピアノの「実技」についてレッスンをつけてくれる教室です。教室によっては、注)リトミック(全身を使い、音楽を体感として身に付けていく訓練)や注)ソルフェージュ(正確に音符を読み込むための基礎訓練で、楽譜を見てドレミで歌うなどする訓練)、理論などを、生徒の年齢や習得状況に合わせて取り入れてくれます。しかし、それらをどの程度教えてくれるかは先生の方針によります。

子供が、「将来は音大に行きたい」「ピアニストとしてプロになりたい」という場合は、教わる内容・量ともに大きく異なるプログラムになるはずですので、先生とよく相談して決めましょう。

注)筆者は音楽の専門家・先生ではありませんので、正確な定義や詳しい内容は専門のサイトをご覧ください。リンク先は、Wikipediaになっています。

教室のタイプ

個人が開業しているピアノ教室と、ヤマハなどの大手の音楽教室があります。個人開業の先生は、個人レッスン(先生ひとりが生徒ひとりに対してレッスンする)の場合が多く、大手の教室ではグループレッスンも選択できます。

子供が、お友達と一緒の方が楽しく続けられる場合はグループレッスンを選び、マイペースに頑張りたい場合は個別レッスンを選ぶなど、子供のタイプに合わせて教室やレッスンのタイプを選ぶのが良いでしょう。

レッスンでは何をするの?

ここでは、筆者の経験を基に、個人開業の先生から個別指導のレッスンを受けた場合についてお話しします。プロになるためのコースではなく、あくまで一般の子供がピアノで簡単な曲を弾けるようになるためのレッスンです。

レッスンでは、主として「基礎練習用」と「楽曲用」のテキスト(楽譜)を扱いました。基礎練習では、ピアノの鍵盤を強弱をつけて弾く練習や、基本的な伴奏パターンの練習、複数の鍵盤を同時にスムーズに押さえる和音の練習(和音から次の和音へ、を繰り返す)をしました。

楽曲は、レベルごとの楽曲集がありますので、それに沿って1曲〜数曲の課題が課されます。先生に指定された課題曲を自宅で練習し、レッスンでアドバイスを受け、「合格」したら次の曲に進むというイメージです。

筆者の通っていた教室では、この他に、自宅学習用の「ワークブック」を使っていました。「ト音記号を書く練習」に始まり、転調や拍子、リズムの基礎といった、音楽の基礎を学びました。教室で解説を聞いて自宅で練習問題を解き、次週先生と答えあわせをする形式でした。

レッスンや練習の頻度は?

筆者の場合、レッスンは週1回、30分でした。自宅では、毎日、1日最低30分練習していました。休日や他の習い事がない日は、2時間くらい練習していたと記憶しています。

レベルの指標は?

ピアノの習得レベルを表すとき、柔道や珠算のような「級」や「段」といった共通の指標はありません。日常会話レベルで自身の上達度を示すには、曲目やテキスト名(バイエル終了、ピアノソナタ集で練習中など)が指標となります。履歴書に記載するなど、一般に認められる基準で自身の技量を示すには、コンクールなどでの上位入賞・受賞経験が必要になるでしょう。

ただし、大手でレッスンを受ける場合には、「ヤマハグレード」など、特定の音楽教室の指標に沿った級(グレード)を検定試験を受けて取得し、自身のレベルを示すことができます。

費用

個人、大手ともにレッスン料金の相場は月額6,000円〜10,000円が一般的です。さらに、これに加えて教材費がかかります。個人でピアノを所有する場合は、12,000円程の調律費用かかかることもお忘れなく(調律は年に一度程度)。

ピアノのレッスンに必要な費用は、教室によって異なりますし、子供の年齢や習得状況によっても異なります。また、大手の場合は入会金や施設使用料などがプラスされますので、あくまで目安としてください。

筆者の場合は、3歳から個人開業の先生に習っており、スタートは月4,000円程でした。月謝に施設使用料という名目はありませんでしたが、テキスト(楽譜やワークブックなどの教材)が一冊終了する毎に、新たなテキスト代として1,000円前後が必要でした。また、レベルアップする毎に月々のレッスン費用も値上がりし、小学校6年生の時点での月謝は6,000円程度でした。これに加え、年に一度の市民ホールを借りて行う発表会のために、参加費が5,000円程度かかかりました。

初期費用

他の習い事に比べ、ピアノは初期費用がかさみます。教室でのレッスンの他、当然自宅での練習が必要になりますので、自宅にピアノがあることが前提となるからです。ピアノの値段の価格帯はとても広いので(家庭用でも数十万〜数百万)、ここで「値段の相場」をご紹介することは控えさせていただきます。

参考 【価格ドットコム】ピアノの値段

ピアノそれ自体の値段は高額ですが、自宅での練習は「ピアノ」でなくてもできます。筆者も、初期の頃は、自宅にあった古いオルガンを使っており、その後、電子ピアノ、ピアノに移行しました。電子ピアノなら5万円〜10万円、さらに中古であれば1万円以下でも購入可能です。ただし、ピアノと電子ピアノでは、弾くときのタッチや鍵盤の重さなどが大きく異なりますので、長く続ける場合は注意しましょう。

参考 【価格ドットコム】電子ピアノの値段

ピアノを習わせる目的は?

あなたが、子供にピアノを習わせたい目的は何でしょうか。子供にピアノを習わせれば、親の期待以上に上達したり、逆に上達が著しく遅い時もあるでしょう。その時は、ピアノを通して人生で何を得てほしいのか、芸術を習得することがどんな助けになるのか、ご自身で考えてみてください。

ピアノ教室に通えば、誰しもある程度のレベルに達することができます。小学校入学前にスタートすれば、5、6年生にもなるとそこそこ有名な曲も弾けるようになり、身近な観客から拍手をもらえることもあるでしょう。

そして、子供の技術がある程度上達すると、親がピアノが弾ける我が子を「猿回しの猿」にしてしまうことがあります。親が子供に芸をさせ、おじいちゃん、おばあちゃんを喜ばせるのは、一見親孝行で温かな家族風景です。ですが、親の側で、「子供のための」という当初の目的がすり替わってしまうと(世間体であったり、祖父母のご機嫌取りであったり)、子供はそれを敏感に感じ取ります。そして、「何のためにやっているのか」わからなくなり、練習が嫌になってしまいます。

また、ある程度のレベルを越えると「向き・不向き」も如実に現れます(先生との相性もありますが)。「続けるか、辞めるか」を安易に決断すれば、将来後悔するでしょう。その時は、当初の動機に立ち戻って、お子さんとよく話し合って進退を決めることをおすすめします。

ピアノの練習で身に付くスキルとメリット

ピアノを習うことで、ピアノの実技能力は身につきます。幼稚園の頃からレッスンを始めて順当に進めば、小学校2〜3年生で「エリーゼのために」、5年生で「トルコ行進曲」「乙女の祈り」、6年生で「ピアノ ソナタ」などが弾けるようになります。また、流行の曲をピアノ用にアレンジした曲も弾けるようになり、自身にとっても周囲にとっても楽しみが増すでしょう。

最近では、「子供の頭が良くなる」と信じて子供にピアノを習わせるケースも多いようですが、ピアノの習得を通して、ピアノの技術以外の才能の開花や、芸術的センスを期待される場合は要注意です。

中には、実際にピアノを通して芸術的才能を開花させる子供もいるようですが、過剰な期待は子供への失望、ひいては親子関係の悪化につながります。…ここで、一般的な個人レッスンで身に付くスキルとメリットをご紹介します。小学校でピアノを習ったごくごく普通の子供の一般的事例といしてお読みください。

学校の授業についていくのに有利?

小中学校では全員に対して音楽の授業が課されています(高校では選択科目であり強制ではありません)。楽譜が読めること、ピアノ教室で習う「音楽の基礎的な考え方」が身についていれば、学校の授業はだいぶ簡単に感じられることでしょう。

頭が良くなる?

ピアノを習っていることと、「頭が良くなること」…つまり国語・算数などの一般教養科目でも高得点が取れることの関係性がメディアでは取り上げられることがあります。しかしながら、ピアノの習得状況とその他の学力に、明確に相関があるかというと、それは不明です。

筆者の経験でも、小中学校で学年トップクラスの成績の児童・生徒はピアノを習っている割合が、確かに多かったと記憶しています。なぜなら、筆者もそのひとりで、お勉強でのライバルの多くは、同時にピアノでのライバルでもありました。

ただし、ピアノを習っている児童・生徒は、同時に複数の習い事や塾に通っている場合も少なくなく、一概に「ピアノが弾ける」→「勉強ができる」とは言えません。親の教育意識が高い家庭においては、学習塾の他に芸術系の習い事にも力を入れている場合が多いため、結果的に成績上位層にピアノを習っている生徒が多くなったという印象です。(ピアノを習わせる親は、子供の成績にも目を光らせているケースが多いという印象です。)

大人になってから役に立つか

ピアノの技術を直接活かせる職場は、音楽関係会社、音楽の先生、ピアノの先生だけではありません。幼稚園教諭として就職先を探す場合は、ピアノ演奏の技術がほぼ必須です。保育園や幼稚園、小学校教員、老人ホームなどでは、ピアノ技術が活かせる職場といえるでしょう。

壮大な楽曲が演奏できなくてもよいのです。小学校の時に数年間ピアノを習っていれば、童謡や歌の伴奏程度なら弾けるようになります。

音楽とは無縁の職場に就職したとしても、ピアノが弾ける大人は周囲から一目置かれます。普段の仕事の他に特技があると、(普段パッとしないキャラクターでも)職場での株が一気に上がるというものです。男性でも女性でも「モテる」要因になるでしょう。友人の結婚パーティなどで、お祝いに一曲弾けると良いですね。

芸術系の習い事は、個人の趣味にできることも大きなメリットです。大人になってから良い曲に出会ったり、自分で弾いてみたい曲に出会ったときに、再開できます。趣味のサークル入るなどして、友人の輪を広げることにもつながります。

ブランクが大きくなると、指も動かなくなりますが、子供の頃に譜面の読み方やある程度の技能を習得していれば、ゼロから始めるより断然成長できるでしょう。

ピアノの練習で意外と身に付かないスキル・デメリット

先にも述べた通り、ピアノを習うには初期費用がかさみます。またレッスン費用も安くはありませんので、開始早々に辞めることになった場合は、お金の無駄が多くなります。

また、個人でピアノを習う場合に習得できるのは、基本的に場合ピアノの「実技」に偏ります。通常のレッスンプログラムでは、音楽の理論などはほぼ習得できないと思ってください。これらの点を踏まえて、ピアノを習わせる場合は、身につくこと・つかないこと、子供の適正を充分考えてスタートすることをおすすめします。

音感が身につくかどうかは個人差がある

また、ピアノを習えば自然と音感がついて歌も上手くなるとお考えの方もいるかもしれませんが、それには個人差があります。3歳から小学校6年生までピアノ(その後6年間トランペット)を経験している筆者はウルトラ音痴で、カラオケは誘われても行きません。

音楽を習えば、かなり高い確率で「相対音感」は身につくでしょう。しかし、「絶対音感」が身につくがどうかは、個人差があり、必ず身に付くものでないことを、実体験から述べさせていただきます。

多くの人にとって社会で直接活かせるスキルではない

ピアノには、全国共通の「級」や「段」などの、レベルを表す指標がありません。したがって、履歴書に書く場合にはなかなか自身の技能を示し難いという面があります。

自身のレベルを明確に示すにはコンクールでの受賞歴などが必要になるでしょう。しかし、「級」や「段」であれば、「自身があるレベルに達した」暁に取得することができますが、コンクール入賞となると、他人と競って勝たなければなりません。珠算での検定試験なら「受験者全員合格」があり得えますが、コンクールで優勝するとなるとそうはいきません。自身の練習量の問題ではなく、「強すぎる相手」を前に敗北することがあります。

一般の大学の受験科目にない

多くの子供がピアノを辞めてしまう原因となるのが「学業との両立が難しくなった」ことではないでしょうか。ピアノをはじめ、音楽は一般の(音大や特殊推薦枠以外の)入試科目にありません。激しい受験戦争の中で、ピアノは「やっても無駄」に思えて、辞めてしまう人が多くいます。

活かせる場が見つけづらい

大学受験や就職を考える年齢になると、「芸術系」の習い事をするより「手に職系」の習い事、履歴書に書ける資格の勉強に時間を割く方が得策に思えるでしょう。自分や周囲を見回すと、芸事を続けるか迷ったとき、「それで飯が食えるか」で判断して辞めてしまう場合が多いように思います。

レッスンは、受験や就活を機に「一時休止」することもできます。収益になる・ならないに関わらず、自分は演奏自体が好きか、音楽が活かせる場はないかなど、辞める前に考えてみましょう。

趣味で続けるハードル

ピアノを趣味で続けるには、自宅にピアノを置くスペースとそれなりの防音設備が必要です。筆者の実家は田舎の一軒家で、家の裏は畑と山でしたので、特に防音設備は必要ありませんでした。しかしアパートとなるとそうはいかず、練習環境のなさから辞めてしまう人もおります。

その点、電子ピアノであれば、ヘッドフォンに接続しての練習もできますので、部屋にスペースがあれば検討してみるのもよいでしょう。

他の楽器と並行して習うときには注意が必要

筆者の体験談として、ピアノを習うときに、他の楽器を並行して練習する場合は注意が必要です。ピアノの「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」の音がもう一方の楽器の階音に対応していない場合があるからです。例えば、トランペットの「ド」の音は、ピアノの「シ フラット」に相当します。

指導者がこの辺をしっかり教えないと、子供はそこに混乱を起こして、せっかく身につけた音感がぐちゃぐちゃになります。

こんな子供には特におすすめ

習い事の中には、ひとりで黙々と練習をこなすことが必要なものもあれば、チームワークが試されるものもあります。ここでは、「ピアノの練習が向いている子供の性質」について筆者の考えを述べたいと思います。

  • 音楽が好きである
    まず、音楽が好きな子供は、練習にも積極的になることから、上達も早いと言えるでしょう。ただし、この場合は本人が「弾きたい曲」がたくさんあることも多いため、単調な基礎練習や先生から出された「課題曲」がおろそかにならないよう注意しましょう。
  • ひとりでも練習ができる
    ピアノのレッスンの前には、普段からの自宅での練習が欠かせません。ひとりできちんと練習できることも重要です。難し場合は、グループレッスンにして、適度に競争心を煽るものありかもしれませんね。
  • 人前で芸を披露するのが好きである
    多くのピアノ教室では、(頻度は教室によりますが)発表会が開かれます。スポットライトを浴びて舞台に立つのが気持ちいいとい感じる子供には、これがモチベーションになるでしょう。

何事も「好きこそものの上手なれ」です。好きであれば上達もしますし、何より人生に楽しみができます。「国際的なコンクールに出て賞を取らなければ意味がない」などということは決してありません。自分の好きな曲を弾いたり、子供やお年寄りを楽しませたり、伴奏者として他の楽器とセッションしてちょっとした舞台に立ったりと、人生が広がります。

子供本人にとってピアノが「好き」であれば、是非続けることをおすすめします。反対に、社会人になって音楽ができなくとも特に苦労することはありませんので(ピアノが引けても音痴な人は筆者だけではありません)、「好き」でないなら早めに見切りをつけましょう。

まとめ

これまでの記事のまとめです。3歳から12歳までピアノを習っていた筆者が、社会人になって、改めてピアノを習うメリットなどについて振り返って考えてみました。子供の習い事としてピアノをお考えの親御さんの参考になれば幸いです。

  • ピアノ教室は一般的にピアノの「実技」を教えてくれる
  • 個人開業の先生と大手の教室がある
  • 個人レッスンとグループレッスンがある
  • 6年生までに「エリーゼのために」「トルコ行進曲」「ソナチネ」くらいは弾けるようになる
  • 初期費用は他の習い事と比較して多くかかる
  • 高校・大学の一般入試受験科目にはないが、幼稚園教諭などの職には必須
  • 趣味として続けられる習い事である
  • 他の楽器と並行して習わせる場合は注意

おわりに

小中学校では、クラスにピアノを習っていた生徒は少なくとも5,6人はいたでしょう。自分より上手な生徒もいたでしょう。しかし、大人になってみると、今でもピアノを弾ける、続けている人驚くほど少ないものです。

もし、ピアノが嫌いになって辞めるのでなければ、休止期間を置いてもよいので、少しずつでも(自主練習でも)続けることを、筆者はおすすめします。意外な人と話が合ったり、別の楽器のアマチュア演奏家が伴奏者を探していたりと、人生が広がります。

ピアノは、大舞台での演奏を目指すこともできますし、趣味としてひとりで楽しむこともできます。また家族など小規模の観客に演奏し、楽しみを提供することもできます。各人が自分の喜びに沿う方法でピアノとお付き合いできれば幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました